アニメ「無職転生~異世界行ったら本気だす~」第4話のあらすじと感想をまとめています。
感想には独断と偏見と原作を基にした解説と、軽いネタバレが含まれていることをご了承ください。
第3話「友達」おさらい
- 外に出られるようになったルーデウスが、三人で一人をいじめている現場を見かける
- いじめられていたシルフを助けたルーデウスは友達になり、魔術を教えることになる
- パウロの勘違いで理不尽に怒られたルーデウスは、冷静に反論してパウロに謝らせる
- 魔術の才能があるシルフに無詠唱を教えるとすぐできるようになりルーデウスは驚く
- ルーデウスはシルフの下着を脱がして泣かせるが、パウロの計らいで仲直りする
第4話「緊急家族会議」感想と解説

第4話「緊急家族会議」あらすじ
ルーデウスの母・ゼニスの懐妊に、喜びに沸くグレイラット家。
だがそのひと月後、メイドのリーリャまで妊娠していることが発覚する。
しかもその父親はあろうことか・・・。
修羅場必至、一家の一大事に直面したルーデウスは機転を利かせて・・・。
引用元:dアニメストア
アニメ「無職転生」第4話はライトノベル1巻に収められています。
修羅場のグレイラット家
「母様、おめでとうございます」
「ありがとう、ルディ。これでやっと、あなたにもさびしい思いをさせずに済むわね」
パウロもゼニスを抱きしめてよろこぶ。
(家族が増えるよ! やったね、ルディちゃん)
(ゼニスは、二人目の子どもができないことを気に病んでいた)
(だからグレイラット家は、その報告にわいた)

「申し訳ありません。妊娠いたしました」
食事の席でリーリャが頭を下げる。

全員が一瞬で感づいて、パウロに視線を集めた。
「す、すまん! た、たぶん、俺の子だ」
ガバッと勢いよく頭を下げるパウロ。
ゼニスは無言で椅子から立ち上がり、無表情でパウロに腕を振り下ろす。
最悪な状況にルーデウスは顔をゆがめた。
パウロはなんてことをしでかしてくれたんでしょうか。
ほのぼのシーンから始まったと思ったら、ほんの1分で重苦しい雰囲気になってしまいました。
原作ではゼニスの妊娠によろこんだ1か月後にリーリャが妊娠を報告しています。
そしてルーデウスはパウロがリーリャの部屋に向かったことを知っています。
ルーデウスはシルフィエットの件ではパウロに世話になったので、もしパウロが疑われたら庇ってやろう、ニセのアリバイをでっち上げてやってもいい、くらいに考えていました。
この時点では原作でもアニメでも、ルーデウスは事態をあまり深刻に捉えていなかったようです。
ルーデウスがいった「家族が増えるよ! やったね、ルディちゃん」には元ネタがあります。
元ネタは「家族が増えるよ! やったね、たえちゃん」で、ネット上では有名な胸糞系成人向け漫画に登場するセリフです。
検索すれば漫画の内容はすぐに分かりますが、気分のよい内容でないのでご注意を。
ルーデウスの結婚についてのくわしい記事はこちら
ゼニスの苦悩とリーリャの後悔
大雪が吹き荒れるグレイラット家の屋敷を背景にオープニング曲が流れる。
食堂のテーブルに向かい合って座るゼニスとリーリャ。

となりの部屋でパウロがうなだれて座っている。
ルーデウスは不安な様子で両方の様子をうかがっていた。
組んだ手で顔を隠したままのゼニスがリーリャに尋ねる。
「それで、どうするつもり?」
「奥様の出産をご助力したのち、おいとまさせていただこうかと」
「子どもはどうするの?」
「故郷で育てようかと思います」
しかしリーリャの故郷はブエナ村から馬車で一か月ほどかかる場所にあり、出産後のリーリャの体で無事に帰ることは難しい。

沈んだ表情のリーリャがつぶやく。
「かも知れませんが、他に頼れるところもないので・・・」
ブエナ村の冬はけっこう厳しかったんですね。
まるで修羅場真っ只中のグレイラット家を表現しているようです。
見ているこちらも息が詰まりそうなくらいに重苦しい雰囲気でした。
第3話で聞いたオープニング曲はきれいな曲だと感じたのに、今回はすごく悲しい曲に聞こえるから不思議なものです。
リーリャの故郷はドナーティ領の南部に位置しています。

アスラ王国はこの世界で最も治安の良い国ですが、それでも母親と生まれたばかりの赤ん坊が馬車で1か月間も無事に旅をできるほど安全ではありません。
この世界には奴隷制度があるので、悪い輩に捕まれば親子ともども奴隷市場に並ぶ危険性もあります。
出産後に故郷に帰るという選択肢は、リーリャと赤ちゃんの健康と安全を考えると、すごく無謀な行為だとルーデウスは気づきました。
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ルーデウス危機を回避する
見かねたパウロが「あの、母さん、さすがにそれは・・・」と口をはさむ。
しかしゼニスから「あなたは黙っていなさい!」とテーブルを叩いて一喝される。
ルーデウスは、リーリャとリーリャの子どもの健康、ゼニスの気持ちやリーリャとの関係、リーリャにお世話してもらったこと、特に「御神体」を黙認してくれたことを思い、「その恩をいま返そう」と動いた。

ルーデウスはパウロに濡れ衣を着せて、リーリャがこの家を出ていかずに済むようゼニスを説得する。
身に覚えのない話にパウロは意見するが、再度ゼニスに「あなたは黙っていなさい!」と一喝される。
(パウロには、シルフィの件で世話になった)
(が、今回は自業自得だ。すまんね、その礼はまた次回だ)
ルーデウスは心の中で詫び、手を合わせた。

ルーデウスは、リーリャは悪くない、悪いのは父様、父様が悪いのにリーリャが大変な目に遭うのは間違っている、生まれてくる子どもにも友達がいると楽しいのではないか、僕にとっては両方ともきょうだい、僕はまだリーリャとお別れしたくない、と理屈と感情論を交えて、ゼニスを巧みに説得する。
ゼニスはルーデウスの言葉を聞きながら心の中で激しく葛藤していたが、大きく息を吐いて決断すると、「わかったわよ、もう。ルディにはかなわないわね」といった。
「リーリャ、うちにいなさい。あなたはもう家族よ。勝手に出ていくのは許さないわ」
リーリャはゼニスの言葉に大粒の涙をこぼす。

リーリャが出ていかずに済んでほっとした様子のパウロに、ゼニスは「あなた、あとでゆっくりと話を聞かせていただきますね」といい放った。
ゼニスはミリス教徒なので、そもそも浮気や不倫に寛容ではありません。
ミリス教はゼニスの出身地、ミリス神聖国に本拠地がある大宗教組織です。
ミリス教の教義のなかに「一人の相手を愛すべし」というものがあり、下半身ゆるゆるのパウロと付き合うときには「他の女性に手を出さない」という約束を交わしているほどでした。
リーリャはルーデウスの出産のために雇われたメイドですが、出産後もずっと一緒に家事をしてきて、現在では親友と呼べるほど親しくなっています。
一番悪いのはパウロだけど愛想は尽かしていない、リーリャに裏切られたけど親子が死んでもいいとは思わない、しかし二人に裏切られて悔しい気持ちは大いにある。
ゼニスの苦悩はそこにあったわけですが、ルーデウスの理詰めの説得と家族を失うことへの不安を感じ取り、二人に裏切られた悔しい思いをぐっと飲み込みました。
ゼニスは本当に寛大ですばらしい女性だと思います。
原作ではルーデウスはゼニスに、パウロに濡れ衣を着せたことをすぐ白状しています。
怒り心頭で部屋に戻ったゼニスを追いかけていき、「母様、先ほどいったのは僕の考えた嘘です。父様のことを嫌いにならないでください」とパウロをきちんとフォローしていました。
ゼニスはルーデウスの白状に驚きはしたものの、弱みを握って女性に迫るような男を好きになったつもりはない、馬鹿で女に目がないからいつかはこういうことがあると覚悟もしていた、いきなりだったから驚いただけ、と返しています。
それから少しやり取りがあったあとでルーデウスは、パウロの冤罪は晴らしたしゼニスの気持ちも救われたようなので、「ま、この調子なら大丈夫だろう。今後はパウロの努力次第。まったくやんちゃで困るよ。二度目はないぜ、セニョール」と、アニメとほぼ同じセリフを独白しています。
ここで疑問に感じるのは、原作ではゼニスにパウロのフォローをしているので、「この調子なら大丈夫だろう。(略)セニョール」というセリフに納得できますが、アニメではパウロに濡れ衣を着せたまま、問題解決を両親に丸投げしているので、「この調子なら大丈夫だろう。(略)セニョール」は、納得どころか意味が通じません。
アニメでは放送時間の関係で原作を端折ることはままありますが、今回の話においては、パウロとゼニスが夫婦関係を円満に再構築するために、ルーデウスがパウロの濡れ衣を晴らす場面は必ず入れる必要があったと思います。
ゼニスはリーリャに「あなたはもう家族よ」といっていますが、その後リーリャを正式にパウロの妻として迎え入れています。
この世界では一夫多妻も一妻多夫も認められていますし、パウロは貴族でありミリス教徒ではないので、妊娠を機にリーリャを第二夫人にしました。
グレイラット家を襲った突然の悲劇は一応決着し、ルーデウスもリーリャに「御神体」の件の恩を返すことができました。
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まさかのリーリャからの誘惑
雪が積もった庭で剣術の稽古をしているルーデウスとパウロ。
リーリャが家の中から二人を眺めている。

(なぜ私は助かったのだろう。妊娠は私が悪い。パウロを誘ったのは私なのだ)
リーリャは毎晩のようにパウロたち夫婦の営みの声を聞かされ、性欲がたまっていた。
ある夜、リーリャはわざと部屋の扉を開け、自分の裸を見せてパウロを誘惑した。
(罰が下るはずだった。情欲に負け、ゼニスを裏切った罰が)
(しかし許された。ルーデウスが許してくれた)
(あの子は何が起こったのかを正確に理解して、的確に会話を誘導し、落し所まできれいに持っていった)
以前、リーリャはおぞましい笑みで自分の胸を見てくるルーデウスを避けていた。
悪魔憑きではないかと思うほど、不気味に感じて恐れていた。

しかし今回の件で、リーリャはルーデウスに対する考えを改め、決意する。
(彼は命の恩人だ。この恩は一生をかけて返さなければ)
(もしこのお腹の子が無事に生まれ、育ったのなら)
(この子をルーデウスに・・・ルーデウス様に仕えさせるのだ)
パウロは剣術の練習と称して、ルーデウスに八つ当たりしていました。
ゼニスの器の大きさに比べ、パウロのそれのなんと小さいことでしょうか。
しかし実はリーリャのほうから誘惑していたとは驚きましたね。
パウロとゼニスの夜の声を毎晩のように聞かされ、情交の匂いの残る夫婦の部屋を掃除させられ、剣術の稽古をするパウロの鍛えられた上半身を見せられ、ゼニスの目を盗んでセクハラされれば、そりゃあリーリャだって性欲が溜まります。
だからといってそれがゼニスを裏切っていい理由にはならず、リーリャは下された罰を甘んじて受けるつもりでしたが、なんとあれほど不気味に感じてさんざん避けていたルーデウスから救われました。
リーリャがルーデウスに抱いていた感情は、以下の記事にくわしく書いています。
魔除けまで行うほど不気味に感じていたルーデウスが、自分とお腹の子を救うためにゼニスを説得してくれたことにリーリャは深く感謝しました。
そしてリーリャは、ルーデウスは賢いので私から避けられていたことに気づいていただろう、決していい気分ではなかっただろう、しかし己の感情より私とお腹の子どもを救うことを選んでくれた、そんなルーデウスを避けてきた自分が恥ずかしい、とも考えます。
だからリーリャは命の恩人であるルーデウスに最大限の敬意を払い、死ぬまで仕えよう、お腹の子も仕えさせようと決意したのでした。
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新しい家族ノルンとアイシャ
時が流れ、ゼニスとリーリャは無事に出産した。
ルーデウスの妹になる二人の赤ちゃんは、ノルンとアイシャと名付けられた。
ゼニスの娘がノルン、リーリャの娘がアイシャ。

パウロがかわいい娘たちにデレデレしている横で、ルーデウスとシルフィエットが勉強している。
パウロが変な顔で「いないいないばー!」をしていたら二人に盛大に泣かれてしまった。
ゼニスとリーリャがあわててノルンとアイシャに駆け寄る。
子育てに忙しいゼニスとリーリャから、パウロは水汲みとロウソクの買い物を頼まれてしまう。

ルーデウスはシルフィエットに「シルフィ、俺は尊敬されるかっちょいい兄貴を目指そうと思う」とつぶやく。
ノルンとアイシャは髪の色がお母さんとまったく一緒なのでわかりやすくていいですね。
ノルンの声は会沢紗弥(あいざわさや)さんが担当しています。
会沢紗弥さんの代表作は「アイドルマスター・シンデレラガールズ」の関裕美役、「温泉むすめ」の鳥羽亜矢海役などがあります。
アイシャの声は高田憂希(たかだゆうき)さんが担当しています。
高田憂希さんの代表作は「NEW GAME!」の涼風青葉役、「アイカツ!」の黒沢凛役などがあります。
原作によるとノルンとアイシャの誕生日は同じです。
リーリャは早産したことで誕生日が同じになっているのですが、はたして誕生日を合わせる必要があったのでしょうか。
ゼニスの妊娠がわかってパウロが性欲を持て余してリーリャを妊娠させて、という経過をたどったと考えると、3~4か月くらいリーリャの出産が遅れてもよさそうでしたが。
ゼニスの妊娠が判明するまで2~3か月、妊娠判明後夫婦生活を休止してパウロの性欲が限界突破するまで1か月、それからリーリャを妊娠させるまで幾日か、という計算です。
むしろゼニスの出産後半年くらい経ってリーリャが出産していれば、パウロが性欲を持て余して(誘惑はされましたが)リーリャに手を出したという説明も説得力を持ちます。
しかし出産がほぼ同時だった場合、パウロはゼニスとリーリャを同時期に相手にしていたのではないか、またはゼニスの妊娠がわかった途端リーリャに手を出したのではないか、という疑いをかけられても仕方のない状況になります。
そもそもゼニスの妊娠がわかって1か月後にリーリャの妊娠がわかったという設定に無理があったのではないでしょうか。
それはともかく、原作によるとノルンとアイシャの出産は大変だったようですが、村の産婆さんとルーデウスの活躍によって無事に出産しています。
ノルンは逆子のために産婆さんはお手上げ状態だったのですが、リーリャが身重の体でがんばりました。
ルーデウスもゼニスに治癒魔術をかけてお産を手伝っています。
ゼニスがなんとか出産できたと思ったら、今度はリーリャが急に産気づきました。
ゼニスの出産で無理をしたせいで、リーリャに負担がかかったのでしょう。
産婆さんは早産には経験があったので、リーリャのほうは問題なく対応しています。
ルーデウスも魔術でお湯を沸かしたり清潔な布を集めたりして、リーリャのお産を手伝いました。
アニメではゼニスの逆子もリーリャの早産もすべてカットされていたので、「あれ、計算が合わないぞ?」と思った人も多かったのではないでしょうか。
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控えめに言ってクズだがパウロは強い
ルーデウスがリーリャをかばった日から、リーリャはルーデウスに話しかけるようになった。
リーリャとパウロは若いころ同じ道場で剣術を習っていたこと、パウロは才能はあったが練習が嫌いで遊び歩いていたこと、リーリャの寝込みを襲って処女を奪ったこと、リーリャを襲ったことが発覚する前に道場を逃げ出したこと、などの話を聞く。
ルーデウスはそんなパウロを「ろくでもねぇ野郎だ」と評価した。
パウロがルーデウスに剣術の稽古をつけるため、木剣を持ってやってきた。
「そんな動きじゃあ、いつまで経っても初級のまんまだぞ」
息子の動きの悪さを指摘するパウロに、ルーデウスは思う。
(控えめにいって、パウロはクズだ)
(しかし、俺は欠点だらけのこの男を認めている)
(なぜか。強いからだ)
この世界の剣術には、剣神流、水神流、北神流の三流派が存在している。
パウロはその三流派とも上級を習得している剣士だった。
ルーデウスが突然放った土魔術のストーンキャノン(岩砲弾)をあっさりと弾き、ルーデウスを蹴り倒すパウロ。

「少しばかし魔術の才能はあるかもしれんが、剣術はからっきしだな」
挑発するパウロをルーデウスがにらむと、「なんだ、まじまじと見て。父さんのようなかっこいい男になりたいか?」と軽口を叩く。
「浮気して家族崩壊の危機を作り出すような男がかっこいいのですかあ? ま、あれに懲りたら母様以外に手を出すのは控えてください」とルーデウスは皮肉を込めていう。
ルーデウスはパウロと話しながら思う。
(パウロはクズ野郎だけど、なんだかんだいって話が合う)
(俺も精神は40歳を超えた元ニート。正真正銘のクズだしな)
パウロと学校や女の子について雑談していたら、シルフィエットがルーデウスを迎えに来ていた。

ルーデウスは7歳になっています。
この世界に義務教育はありませんが、貴族の子どもたちが読み書き、算術、歴史、礼儀作法など、基本的な教育を受けられる学校はあります。
学校はロアという大きな町にあり、ブエナ村にはありません。
ロアはブエナ村から馬車で6~7時間ほどかかる距離にあるので、もし学校へ通うにしても毎日家から通学というわけにはいかないようです。
しかしパウロのクズエピソードは枚挙に暇(いとま)がありませんね。
ルーデウスは自分もクズだからとパウロを擁護していますが、姉弟子をレイプして発覚を恐れ逃亡なんて、普通であればとても擁護できないレベルのクズっぷりです。
パウロは剣神流、水神流、北神流で上級を習得していますが(剣神流は11歳で上級になっています)、上級というのは「才能ある者が一つの流派に打ち込んで十年ぐらいかかるといわれている」そうで、剣道でいうと四段か五段の実力になるということです。
一つの流派でも上級になるのは大変なのに、三流派ともに上級習得、それも練習嫌いで遊び歩いてですから、剣術においてパウロはたしかに天才で間違いないようです。
強いからクズでもいいというわけではないのでしょうが、この世界は凶暴な魔物がいて強さが必要な場面が多いので、強ければある程度のことは目をつぶってもらえる価値観があるようです。
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シルフィエットの不安
丘の上で魔術の練習をするシルフィエット。

(シルフィには才能がある。近いうちに俺を追い抜いてしまうかもしれない)
ルーデウスは鳴らない草笛を吹きながら、「あー、学校かあ」とつぶやいた。
「なんか元気ない」というシルフィエットにルーデウスは答える。
「最近行き詰まってるんだ。剣術も魔術もあんまり上達してない」
シルフィエットは不安そうに「どこかに行っちゃうの?」と尋ねる。
「そうだなぁ、この村でできることも少ないのかもしれないなぁ」
ルーデウスが何気なくそう答えると、シルフィエットが突然抱きついてきた。

驚くルーデウスに、「やだ、どこにも行かないでぇ」とシルフィエットは涙で顔を濡らしながら訴える。
ルーデウスはシルフィエットを抱きしめ、「わかった、わかったよ。どこにも行かないよ」と頭をなでながらなぐさめた。
(こんな子をほっぽり出して、どこへ行こうというのかね)
(魔術の上達? へへっ、これ以上、上達してどうするってんだ?)
(そんなことより、シルフィとこの村でのんびりすごそう)
ルーデウスがあせりを感じるほど、シルフィエットの魔術はだいぶ上達しているようです。
シルフィエットはこのころ、無詠唱ですべての中級魔術を使えるようになっています。
シルフィエットにとってルーデウスは村で唯一の友達ですから、ルーデウスがどこかへ行くのはすごく心細かったんでしょうね。
中級魔術を使えるシルフィエットをいじめる子どもはいないでしょうが、シルフィエットと遊んでくれる子どももいないので、ルーデウスがいなくなるとシルフィエットはまた一人ぼっちです。
最近シルフィエットは午前中からルーデウスの家に来て、ルーデウスの剣術の練習を見ていたり、魔術の練習をしたり、算数や理科の勉強をしたりと一緒にいる時間が長かったので、特にさびしく感じたのかもしれません。
幼馴染みのかわいい女の子にあんなふうに泣かれたら、ルーデウスでなくても「あーもういいや、ここでずっとすごそう」となってしまいますよね。
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王級魔術師ロキシーからの手紙
(な、そうしよう、そうしよう。二人で一緒に育って、ちょっとずつ俺好みの女に育ててやるんだ。ンフフフフッ)
ルーデウスはベッドの中で枕を抱きしめながら、昼間の続きを妄想していた。
妄想が極まったルーデウスが「シルフィー!」と叫んだとき、パウロが部屋に入ってきた。
あせるルーデウスを見て、何をしていたか察したパウロは「へっへへー」とニヤける。
パウロはロキシーから届いた手紙を持ってきていた。
ロキシーの手紙には、ルーデウスと別れてから二年が経ったこと、現在シーローン王国にいて第七王子の家庭教師をしていること、王子はルディほどではないが魔術の飲み込みが早くて頭もいいこと、ロキシーの着替えを覗いたりパンツを盗んだりするところがそっくりなこと、ロキシーが水王級の魔術を使えるようになったこと、魔術で行き詰っていたらラノア魔法大学の門を叩くこと、などが記されていた。

一緒に手紙を読んでいたパウロは、ロキシーが水王級魔術師になったことに感心する。
この世界で王級魔術師は片手で数えられるくらいしかいないということだった。
そしてロキシーの下着を盗んだことをパウロに知られてしまった。
(情けない現状に釘を刺された気分だ)
(クソッ、ロキシーに落胆はされたくない)
「ラノア魔法大学、か・・・」
その夜、ルーデウスはロキシーの手紙を読み返しながら、ラノア魔法大学へ行くことを決意する。
ロキシーはルーデウスの家庭教師を辞めたあと、冒険者となってシーローン王国の迷宮にもぐっていました。
ロキシーは一人で迷宮を攻略していたら有名になり、シーローン王国で第七王子の家庭教師(のちに宮廷魔術師)として雇われることになりました。
ロキシーにセクハラして火達磨にされていた第七王子はパックス・シーローンといい、のちにルーデウスと深く関わることになります。
シーローン王国は世界地図で見ればアスラ王国の南東にあり、赤竜山脈を大きく迂回しなければ行けないので、馬車で移動しても半年ほどかかります。

パウロも感心していた水王級魔術師ですが、ロキシーは雇われたシーローン王国の書庫にあった水王級の魔術に関する書籍を見つけたことで、水王級魔術を使えるようになりました。
ロキシーの手紙にはさらに水神級を目指すと書いてあり、ルーデウスはロキシーと別れたあと何も変化していない現状に焦燥感を感じ、ラノア魔法大学への入学を決意したようです。
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ラノア魔法大学への入学希望
翌朝、食事の席で、ルーデウスはラノア魔法大学へ入学したいという希望を伝える。
パウロは三つの理由で反対する。
師匠として剣術の稽古を途中で放り出せないこと、親としての責任を放棄するわけにいかないこと、シルフィエットの分の学費まで出せないこと。
ルーデウスは高給をもらえる仕事の斡旋をパウロに依頼する。

「仕事? なぜだ」と聞くパウロに、「父様に認められて家を出るまでに、シルフィの分の学費を僕が稼ぎます」とルーデウスが答える。
「それはシルフィのためにはならないぞ」
「はい。でも僕のためにはなるかと」
固い決意の表情でいうルーデウスに、パウロは仕事の斡旋を承諾する。
父親と息子のやり取りに、ゼニスとリーリャは顔を見合わせた。
パウロはルーデウスが7歳で家を離れるといったことに驚いています。
パウロは12歳のときに家を出ていますが、家を出ることを考え始めたのは11歳になったころからだそうで、自分の息子の早い成長がうれしくもあり心配でもあるようです。
パウロはシルフィエットの父親、ロールズから以前に受けた相談と今朝のルーデウスの話を聞いて、ルーデウスとシルフィエットは少し離さないとお互いによくない、将来的にまずいと考えています。
ロールズの相談は、最近シルフィエットは親の言い付けを守らなくなり、二言目には「ルーデウスが、ルーデウスが」というようになって困っているということでした。
シルフィエットはルーデウスにべったりと依存し、ルーデウスもまたシルフィエットに依存しているようにパウロには見えました。
パウロは今まで、親に依存しすぎてでく人形のようになった貴族を何人も見てきました。
ルーデウスがこれから先もシルフィエット一人だけを愛してずっと一緒にいるなら依存していてもかまいませんが、もしルーデウスが他の女性になびいてシルフィエットを置いていくようなことになったら、シルフィエットは糸が切れたでく人形のように立ち直れなくなってしまうだろうとパウロは考えます。
ルーデウスは自分の息子だから他の女性にふらふらする可能性は大いにある、シルフィエットの人生を自分の息子のせいでつぶすなんてとても許せることではないとパウロは考えました。
そこでパウロは、ルーデウスが仕事の斡旋を依頼してきたことを利用して、ルーデウスとシルフィエットの関係を適正なものにしようと画策したのです。
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猫系獣族ギレーヌ登場
庭で剣術の稽古をしているルーデウスとパウロ。
家の前に一台の馬車が止まり、獣族の女性が降りてきた。

「よぉ。ひさしぶりだな、ギレーヌ」とパウロが声をかける。
ルーデウスはギレーヌを見て「じゅ、獣人きたー!」と目を輝かせる。
「ギレーヌ! ひさしぶりね、元気だった?」
ゼニスがアイシャを抱いて駆け寄る。
パウロが「おまえが来たってことは、あの話はオッケーってことでいいんだな?」と確認すると、ギレーヌは「ああ」とだけ返事した。
ゼニスが「うちのルーデウスをよろしくね」と頼んでいる。
「ルーデウス坊ちゃま、さびしくなります」とリーリャ。
「元気でね。帰ってくるのを楽しみに待ってるわ」
ルーデウスの額にキスをするゼニス。

ルーデウスが状況をつかめずに「待ってください。一体なんの・・・」といいかけると、パウロが「なあ、ルディよ」と声をかけてくる。
「おまえさ、シルフィと距離を置けっていわれたら、どう思う?」
パウロの突然の無理な注文に、ルーデウスは「いやに決まっているじゃないですか」と答える。
「だよなぁ」とつぶやくパウロに、ルーデウスは「何なんですか?」と不安を増す。
「いや、何でもない。話をしたってどうせいいくるめられるだけだしな」
パウロはそういうといきなりルーデウスの襟首をつかみ、乱暴に放り投げた。
猫耳と尻尾と巨乳を持つ獣族の女性は、ギレーヌ・デドルディアです。
ギレーヌの声は、豊口めぐみ(とよぐちめぐみ)さんが担当しています。
豊口めぐみさんの代表作には「鋼の錬金術師」のウィンリィ・ロックベル役や「マクロスF」のクラン・クラン役などがあります。
ギレーヌとパウロとゼニスは「黒狼の牙」の元メンバーで知り合いでした。

「黒狼の牙」では剣士として、パウロと共に前衛を務めていました。
ギレーヌは剣神流「剣王」の称号を持っています。
ルーデウスがパウロに仕事の斡旋を依頼して1か月が経っています。
パウロはコネのある貴族にルーデウスの仕事の件で手紙を書いていましたが、返事の代わりにギレーヌがやってきたようです。
ルーデウスは何がなんだかわからない様子ですが、大人たちはみんな承知だったようですね。
ギレーヌについてのくわしい記事はこちら
ルーデウスVSパウロ
パウロに投げられて数メートル先の地面に落ちるルーデウス。
パウロが木剣をかまえ、真剣な表情でルーデウスに迫ってくる。
ルーデウスは左手から火と風の混合魔術を放ち、バックステップで距離を取る。
怯むことなく爆発の中から突進してくるパウロ。
ルーデウスは風魔術を使って目前で真横に避ける。
同時に土と水の混合魔術で、パウロの足もとをぬかるみにして動きを止める。

ぬかるみから一瞬で足を抜いたパウロは、流れるような動きでルーデウスを追い詰める。
一気に距離を詰められたルーデウスはあわて、闇雲に木剣を振り回した。

パウロはルーデウスの木剣を水神流の技でスルリと流し、振り返りざま上段からの一撃をルーデウスに浴びせた。
「無職転生」で初めての戦闘シーンは迫力がありましたね。
勝負は一瞬で決まりましたが、パウロは魔術師相手の奇襲で三歩も使ったことに驚いています。
近接戦闘では圧倒的に剣士有利なので、通常なら最初の一歩で仕留められていたようです。
ルーデウスが無詠唱で魔術師を使えることとパウロ相手に何回もシミュレートしていたことで、実戦豊富な上級剣士を手こずらせる結果になりました。
パウロは「内容的には完璧に負けていた」「いまどこかのパーティーに放り込んで迷宮を探索させても魔術師としてすごく役に立つだろう」「我が子ながら末恐ろしい。だが、うれしい」と息子の実力を素直に評価しています。
ルーデウスがパウロの足止めに使ったぬかるみはのちにルーデウスの得意技となり、冒険者のあいだでは「泥沼」という二つ名で知られるほどになります。
ルイジェルドについてのくわしい記事はこちら
ルーデウスどこへ行く?
ルーデウスは馬車の中で目が覚めた。
「パウロめ、何しやがる・・・」
痛みを感じる首をさすりながら体を起こすルーデウス。

ルーデウスの視線が定まると、目の前にギレーヌが座っていた。
ルーデウスは「こんにちは。ルーデウス・グレイラットと申します」と思わず挨拶する。
ギレーヌは「パウロの息子にしては礼儀正しいのだな」「ギレーヌだ。明日からよろしく頼む」と返した。
「それはどうも。よろしくお願いします」
何がなんだか理解できないまま、ルーデウスはそう返事した。
ルーデウスを乗せた馬車はどこかへ向かっていた。
ルーデウスはパウロから浴びた一撃で気を失っていました。
そういえばルーデウスはギレーヌが登場したあとあれよあれよという間に話が進んだせいで、ギレーヌと挨拶を交わしていませんでしたね。
ギレーヌはルーデウスに「パウロの息子にしては礼儀正しいのだな」といいますが、原作では「母様の息子でもありますから」とルーデウスは返しています。
ギレーヌは「そうか。ゼニスの息子だったな」というのを聞いて、ルーデウスは「両親の知り合いらしい」と安心しますが、アニメではゼニスとギレーヌが親しそうに話しているのを見ているのでこの場面はカットされています。
カットされた場面といえば、パウロがルーデウスを気絶させて馬車に乗せるとき、ちょうどグレイラット家を訪れたシルフィエットが暴れた話はアニメではまったく描かれていません。
シルフィエットはロールズに連れられてグレイラット家に来ていました。
原作ではルーデウスは縄で縛られていたので、シルフィエットはルーデウスがなにかの危機にあると判断して助けようと思ったようで、いきなりパウロに中級魔術を放っています。
パウロでなければ死ぬほどの威力だったそうなので、シルフィエットの本気の攻撃魔術だったのでしょう。
その後シルフィエットはロールズに諭されて納得しますが、大好きな幼馴染みとの別れが、気絶させられ縄で縛られ馬車に乗せられる姿だったというのはちょっとかわいそうですよね。
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まとめ:第4話の感想と解説について
今回は、第4話の感想と解説についてまとめました。
- パウロの仕業でゼニスとリーリャが妊娠し、グレイラット家が修羅場を迎える
- ルーデウスの機転で家族崩壊の危機が回避され、リーリャとお腹の子どもが救われる
- ノルンとアイシャが無事に誕生、ルーデウスは魔術と剣術で行き詰まりを感じる
- ルーデウスがラノア魔法大学への入学を希望し、学費のために仕事の斡旋を依頼する
- ルーデウスはパウロに気絶させられ、馬車でギレーヌにどこかへ連れていかれる
第4話のオープニングはほんとうに重苦しかったですね。
今まで見てきたアニメであんなに生々しい修羅場はたぶんなかったのではないかと思います。
しかしゼニスは本当に寛大ですばらしい女性ですよね。
ルーデウスの誘導があったとはいえ、さまざまな葛藤を乗り越えて、リーリャを許すことをあの短時間で決断したわけですから。
この世界の倫理観は現代日本と多少違っていて、性行動に関して寛容というかあまりこだわらないところがあるので、ゼニスも多少は理解があるのでしょう。
今後、「無職転生」は話が進むにつれて、性に関して潔癖な人であれば顔をしかめたくなる表現が出てきます(すでに前世の男性やロキシーやリーリャのオ○ニーシーンがありましたが)。
そしてルーデウス対パウロの戦闘シーンは迫力がありましたね。
これからもたくさんの戦闘シーンがある予定ですが、ああいうすごい表現で見られるとしたら楽しみで仕方ありません。
以上、「無職転生」第4話「緊急家族会議」の感想と解説でした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
アニメ「無職転生」第4話はコミックス1巻に収められています。
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